五代に起きた実話
真夏の暑い午後、
かげろうが漂う道、
自転車に乗った少年、
頬からあごへ流れ落ちる汗、汗、汗。
少年が猛スピードで走り抜けたとき、
道路の左側に何かピクピク動くものを感じた。
少年はそのまま通り過ぎていったが、
何となく気になり引き返した。
それは鳥だった。足を怪我して歩けず飛べない。
腹這いで動こうとしている動作がピクピクに見えたようだ。
鳥はアスファルトの上で焼き鳥になってしまう。
そっと手に包み込むように持ち上げ、
近くにあった木の下に運んだ。
日陰で、土があり、草があるところだ。
ボトルに入った水を
鳥に与えた。
飲むかどうかはわからないが、
今できることをしようと思った。
暑い夏が過ぎ、
秋の夜、部屋で読書をしていたところ、
開いていた窓から何かが飛び込んできた。
鳥だ!
とっさに「あの鳥だ!」と感じた。
部屋の中を飛びまわる鳥に、
わかった!わかった!
もうわかったから!
鳥は入ってきた窓から夜空へ飛んでいった。